企画初心者に向けたい、企画の入り口と出口
企画職を目指す方に向けて、よくある企画の作り方と、おすすめしたい企画の作り方をご紹介します。
乙女ゲームとはいえ、プロデューサーやディレクターにはまだまだ男性が多い昨今ですが、私たちひつじぐもが各社のプロジェクトをお手伝いさせてもらえるのは、女性をターゲットにしているがゆえの難しさが関係しているのかもしれません。
少し前のことですが、「女性向は企画がシンプルすぎて逆に苦戦している……」と言われたことがあります。
男性向(一般向)は、これとこれとこれをやれば鉄板だ、みたいな法則がどうやらあるっぽいのですが、女性は感覚で合う、合わないを判断するようだと。そしてその感覚は、消費者に限りなく近くないとわからない……。(聞いた話なので実際には違うかもしれません)
目次
◯◯モノからの入り口
確かに、乙女ゲームにおいては、「◯◯モノをやる」ってスタートが多く存在します。
◯◯=ヴァンパイア、王子様、戦国 等々
こうなってくると売れるネタを一番に見つけたモノ勝ちで後発は不利。
と思いきや、上記のようなテーマで既にリリースされた大企業のアプリゲームを遊び慣れたお客様は、「こういったものなら面白い」とジャンルにつく現象が起きるようです。
すると、「◯◯モノをやりたい」で企画を立てるのは案外イケるのかもしれない、ということになります。
私たちひつじぐもが他社と協力するときも、この◯◯部分が決まっていて、その中身を考える部分から、というのはよくあります。
乙女ゲームにおいてこういった企画の発案の仕方を否定するわけではなく、特に潤沢に資金がある場合は有効だと思っています。
◯◯企画のリスク
もし乙女ゲームの企画がノーアイディアだとすれば、「◯◯ネタから原案を考える」方法は試すに値する方法ですが、私は、特に企画初心者がやるにはリスクが高い方法だとも思っていて、ニッチな企画に陥りやすいということが挙げられます。
もちろん、叩いていける環境があれば、ある程度ニッチでもいいかもしれませんが、ニッチ戦略を取る予定もないのにいきなりニッチだと、いずれにせよ伸び幅が相当に限られます。
よく採用で「まだどこも実現していない企画書」を添付していただいたりするのですが、この現象が起きやすい、ということです。
出口から考える企画を提案したい
そこで私が提案したいのは、出口から考える企画です。
これは、最終的に◯◯モノになる可能性はありますが、その中でも新しい要素がある考え方です。
やり方は簡単なのですが、企画が商品になった時のことを想像する。というものです。
ゲームならインストールして、課金する瞬間、彼女は何を思っているのか。何と言うのか。
そこにはどんなキャラクターがいるか。
どういうところが他のアプリゲームと違って、彼女は愛を傾けたのか。
そこをドラマの一幕のように、鮮明にイメージします。
次に、そのビデオテープを巻き戻し、彼女がそのアプリゲームを知った瞬間を再生します。Twitterか。イベントか。店頭の看板か。Twitterなら何が決め手でクリックしたのか。
これは、ペルソナ戦略と言われるものですが、女性向でモノを作るなら、このペルソナをどれだけ詳細に設定できるか、そしてある程度のマスが取れるようなペルソナにできるか、が肝のような気がしています。
自分が喜ぶ企画、から考えると軸がぶれやすいので、大衆が好むモノを素直にいいと思えるような人を友人の中から探して、その人が喜ぶものを考えるのが個人的にはおすすめです。
プレゼントをあげるような気持ちで……。
女性向はそういった起点が一番ふさわしいのではないでしょうか。
もう少し具体的な企画書の話
ちなみに私は他社でお仕事する時は、こういう感じで企画書を書きます。
相手にもよりますが、他社に向けて、いちから企画書をつくるときは絶対に書き込まない。ぺラ1枚の素案を出す。これを見たら欲しいと思えるものしか書かない。あとは相手が勝手によきに妄想してくれる。相手の欲しいものを提案する仕事だから、いつでも修正して、要望を盛り込んで完成させる。
— 島田類 (@onimu_jp) December 20, 2016
企画は、企画者の好きを実現させるんではなくて、決裁者の非言語化された要望を形にして見せるもの。最初のビジョンを人に伝えるもの。あなたはこういう人ですよね?ここで悩んでますよね?こういうもので解決できますよ!あるいはもっと素敵になりますよ。そこをストーリーとして見せてほしい。
— 島田類 (@onimu_jp) December 20, 2016
この案を採用することでどのように幸せになるか。採用しないことでどのような損失があるか。それがもしわからないのであれば読み物として面白いものにするとか。
— 島田類 (@onimu_jp) December 20, 2016
実は私は企画者チームをつくって、彼らに囲まれて仕事をするのが夢です。(業界的にも企画者=ディレクターと思われることが多いのですが、あえてディレクター集団ではないので、念の為)
その時も、やはり企画はストーリーで語りたいし、まるで既にリリースしたかのように感動体験を語りたい。
そのくらい鮮明なビジョンがあってこそ、企画が成り立つのかもしれません。