ノベルゲームらしいノベルゲームはこれからインディーズが実現するようになるのだろうか?「ファタモルガーナの館」
2日間、寝る間も惜しんでプレイしました。
期待以上の傑作です。サークル「ノベクタクル」の放つノベルゲーム「ファタモルガーナの館」。
「かまいたちの夜」や「428 ~封鎖された渋谷で~」のような読み応えのあるノベルゲームを発作的にやりたくて、いろいろ調べた結果、ちょうどDLsite.comでダウンロード販売されていて、すぐにプレイできそうだったので購入。
もともと2012年末に同人ゲームとしてリリース。
その後活動の幅を広げ、弊社の取引先のでもあるHOBIBOX様で商業流通されていた記憶があり、前々から気になっていたのも決め手でした。
↑こちらもすごくオススメです。
オーソドックスなビジュアルノベルで、選択肢によってエンディングが分岐していきます。
呪われた館で目覚めた「あなた」は、自分自身を失っていた。
記憶はおろか、生きているのかどうかも分からない。
そんな「あなた」を、館の主だと告げて慕う女中がいる。
彼女に導かれて、館の様々な時代で起きた悲劇を「あなた」は目撃していく。
(c)Novectacle
というあらすじ通り、ミステリアスな女中に手を引かれて、様々な扉を開けて、屋敷の過去を「見て」いきます。
それぞれの屋敷の過去は美しくて、もの悲しい。童話の世界のよう。
一番目の扉では、兄を王子様と慕う貴族の少女が、その恋心の逸るままに、兄と白髪の娘を陥れる。
(c)Novectacle
二番目の扉では、獣と呼ばれ迫害された青年が、平穏を望む半面、自身の凶暴性を抑えられなくなり、最後には恋人すらも惨殺してしまう。
(c)Novectacle
三番目の扉では、白髪の娘を愛しすぎたばかりに、彼女を幽閉してしまい、最後に彼女を失った青年実業家。
(c)Novectacle
いずれの扉の先でも、白髪の娘が現れ、悲劇に巻き込まれてゆく。
毎年夏にテレビが幾度となく放映するちょっと怖い怪談話のようなオムニバス。
実際のところ、みっつめの扉を開けて戻った時点で、「ああ、もうそろそろ転かな、終わりかな」と思っていたのです。
が、その三番目の扉の後から物語が急転していき、転だと思っていたものは、「起」の「転」だったのか! とかなり焦りました。
四番目の扉のあたりで、一度検索し直して、総プレイ時間を確認。シナリオ量4M……!
4Mって、いまいち実感しづらいですが、2,000,000文字です。文庫本でいうと、6~7冊にあたります。
これをスラスラと読ませるわけですから、このシナリオ力(?)の高さがおわかりいただけるかと思います……。
オムニバスだなと思っていたものは、まさしく序章だったのです。
数時間でプレイし終えるだろう……と思っていたので、一旦ここで中止して、翌日プレイを再開。
それからは、綺麗に伏線や謎が収束していって、確かに上質のミステリーでした。
一言で言うと、輪廻転生のお話なんですが、罪があり、悲劇があり、成長があり、そして赦しがある。
素晴らしいタイトルでした。
ミステリー系の映画や小説がお好きな方には是非おすすめしたい。
退廃的な雰囲気も魅力的です。
最近の商業ゲームでは、選択肢だけのノベルゲームでも(もはや選択肢だけというのも珍しくなってはきていますが)、目パチしたり口パクしたり、ボイスが付いたりとリッチな表現が標準になってきている感があります。
文章と、最低限のビジュアル(絵)と、音楽で楽しませるという、シンプルな表現は何にも勝るものなんですね。
リッチな表現をてんこもりにするのよりも、シンプルにすることは、正直勇気がいる。
でも、そうする事で、本当に読み物としての面白さを追求できている!
さて、特にアプリ市場におけるノベルゲーム(特に恋愛シミュレーションゲーム)はソーシャル機能が標準。
先を読むのにチケットを回復させて、ガチャを回して、アバターに課金して……と、ノベルそれ自体に集中できないスタイルが多くなっていますが、もっと根本的に面白くするには!?
……と、ここのところ、「ゲームの表現」についてずっと考えていたので、原点回帰という点でとても参考になりました。
厚塗りの絵は好みが別れそうですが、それで倦厭するのは本当に勿体ない。
ノベクタクルさん、これから追いかけていきたいです。
自主製作サークル - Novectacle ノベクタクル -
「ファタモルガーナの館」体験版もあります。
- 出版社/メーカー: Novectacle
- 発売日: 2013/01/25
- メディア: DVD-ROM
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