鬼むぅブログ(転生 Ver.1.02)

感じたことを時々綴ってます

MENU

シナリオライターになりたいあなたは何ができるのか? 的確な自己分析と実際の仕事の内容

もしあなたがライターになりたいと思っていたら

そしてそれが乙女ゲーム美少女ゲームといった、いわゆるノベルゲームのライターだとしたら。

 一日に少なくとも原稿用紙で十枚は書いている(書いていたことがある)でしょうね。

 (もちろんこのスピードはプロに比べるとかなり遅い)

 そしてそのシナリオは、クオリティはともかくとして、映画や音声ドラマの台本形式ではなく、即ゲームに表示されるようなシナリオであるべきだと思います。

 (つまり、ゲームのシナリオが最低限どういうふうに執筆されるのか知っている必要がある)

 もし、これらを知らないで「乙女ゲームのライターになりたい」と言っているのであれば、あなたはシナリオを知らず、また書けもしないのに、なぜなりたいのか、と逆に問われることになります。

たとえば、あなたが自他共に認める引きこもりレベルのコミュ障だとします。

そんな人が営業職に応募しても、採用になるはずがないし、採用されたとしても、1週間も勤務できるかどうか疑問です。

シナリオライターになりたいというからには、それはさぞかしゲームが好きだとか、その会社の商品への愛が強いとか、書く事が好きか。

どれかしかないだろう……と思いきや、そうでない人がとても多いのが現状なのです。

書くのが好きだからシナリオライターになるか? シナリオライターになるから書くのか?

非常によくあるパターンとして挙げるならば、文章は誰にでも書けるという認識の元、何のスキルにもない自分にでもシナリオならできるかもしれない、と考えている可能性。

ならば、ゲームに関わりたいというだけで、ライターになる必要はないのではないでしょうか。

当社でも、よく未経験者がライターになりたいといって、面接をしたり採用したりしますが、シナリオなど書いたこともないという素人以前の人間がやってくることが多いのです。

実際は声優に会いたかったり、とりあえず作品作り(クリエイティブ)に関わりたいという理由で門戸を叩くケースです。

当社ではシナリオを執筆する前に、誰でも必ず通る選別がありますが、一文字も書けなかった、という方もいます。この方は一か月以上アルバイトをしていて、この試験の内容も知っていました。

期間も十分に与えられて、やる前日まで、「絶対に書ける」と自信を持っていたにもかかわらずです。

このケースはかなり極端ですが、たとえ一か月にしても、新人に割いた時間やリソースは無駄になります。また、これは互いに不幸です。

だから、まずできうる限りの業務内容を調査して、自分にその仕事ができるか問い直して欲しいと思います。

※何がしたいかではないことに注意。

あなたがやりたいのはシナリオを書くことですか?

 さて、次に重要なのは、あなたが「シナリオライターがする」と思っているパートが実は違う業種の人間がやっている可能性があるということ(=つまり実際には別の技能者になりたいと考えている可能性がある)ことである。ここで問題となるのは「何をもって、シナリオとするか」になります。

 一般的にゲーム(文章関係のフェーズを抜粋)というやつは、

 (1)企画

(2)キャラ・世界観・スチル設定

(3)プロット

(4)プロットに沿って執筆したテキスト

 で成立しています。簡単に各フェーズを解説すると、

 (1)の企画は、コンセプトやテーマ、ターゲット層、予算、販売スケジュールなどを含みます。

外注ライターがクライアントに向けて提出する企画は、大抵は、(1)〜(3)までの仕様を簡潔にまとめたものを指しています。ことにノベルゲーにおいて、世間ではライターが企画を出すという一般認識がありますが、ディレクター・原画・CG、様々な職種の人が企画をやります。面白い企画、人目を惹く企画を出すにはコツがありますが、ライターだからやるべきとか、うまいといった作業でないのは確かです。

(2)企画である程度決まっている設定に肉付けがなされます。

CGのような別分野のスタッフが参照して絵にできるようにポーズや服装、表情案も書き出します。スチル指定は、シナリオのどこにどのようなスチルを挿入するか、また構図やポーズなども設定する必要があるので、プロットを担当する人間(あえてライターとは言いません)がやることが多い。

 (3)プロットというのは、一言で言うと、あらすじです。

シナリオの骨子であり、設計図といってもいいかもしれません。テキストを書くライターは、このプロットに沿って執筆します。(3)と(4)は分業できます。というか、ほぼ分業制です。ディレクター、あるいはメインシナリオライターが担当することがほとんどでしょう。(4)で実際にゲームに表示される文章を書くライターが(1)〜(3)に関わっていないという事態は珍しくも何ともありません。

(4)ゲームに実際に表示される文章のこと。

モバイルのゲームでも最近はかなり容量が多いので、一タイトルを複数人で書いていることがほとんど。ゲームにクレジットされるライターでも、指示に沿ってテキストを書くということしかしていないということはざら。たまにストーリーやキャラクターの過去などが理由でライターが批判されていますが、該当ライターは全く関与しておらず、批判されるべきは社内のディレクターだった、なんて事態は日常茶飯事であります。

さて、シナリオとはどのフェーズを指すのでしょう?

 実は、この単語は厳密にこれという使い方は決まっていません。人によってシナリオのとらえ方が違います。しかし、世の中でシナリオライターを名乗る人間のほとんどは、(4)であることが多いです。しかし、あらすじに沿ってテキストを書くだけの作業をシナリオライターというのは抵抗があるので、テキストライターと呼ぶこともあります。

 以前、アニメの脚本家とお話していて、このゲームの分業制については大変驚かれました。恐らくアニメ業界ではプロットも脚本家がやるのでしょうね。あらすじを他人に任せて、文章だけ書く、そしてそんな仕事をした人間がシナリオライターと名乗るのはその人にとって、恥ずかしいことだったのでしょう。

ただ、それが恥ずべきことかと言われれば、そうではないのでは? というのが私自身の考えです。

ゲームというのは、非常に膨大な作業の積み重ねでできています。シナリオもプロットもとても一人でできる作業量ではないし、一人でできるような時間も許されていません。

そして、プロット作業とテキスト作業というのは、実はあまり関連性がありません。どちらにしろある程度のレベルに達するためには、双方を知っておく必要はあるのですが、じゃあプロットがうまいからテキストもうまいかというと、そうではないし、逆もまたしかり。

確かにプロットが得意、好きという人はあまりいないのですが、それは単にプロットをやらないから。また、一般的に多い案件はクライアントがプロットまで書いて、テキストをひたすら書く作業というものなので、実際に仕事ができる機会が単純に少ないのでしょう。

 プロットをやりたい者がプロットを、テキストをやりたい者がテキストを担当する、という職能分離スタイルは、実はゲームにはぴったりなのです。企画からならともかく、プロットだけを外注するというスタイルは今はまだ珍しいでしょうけれど、社内でも、プロットを書ける人間は少ないので、実はプロットライターは喉から手が出るほど欲しい人材なのです。

 シナリオを書きたいという人は、応募する前に、自分が何が得意なのか、何ができるかということをまず考えてみましょう。

 企画や設定。

 あらすじをつくること。

 あらすじを読んで、テキストに起こすこと。

 どれも、必要な能力が違います。

 各作業について、単に自分が好きなのか。

それともその作業について他者から評価されているのか。

どれくらいの作業スピードなのか。

 自己分析することから始めてはいかがでしょうか。